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翔太は携帯電話を切ると、ふうと息をついて横になった。
実は翔太は千春に嘘をついていた。ルビック星の自転速度がどれくらいなのか、小学生の翔太にわかるはずがなかった。まして地球とルビック星の自転速度が違うと公転のバランスが崩れるというのも翔太の想像にすぎなかった。ただルビック星の円周が地球の半分だということはわかっている。またジルの年齢やルビック星の人たちの平均寿命から、ルビック星の一年が地球の二年に相当するというのも想像できる。このことから、翔太は咄嗟に地球とルビック星の自転速度が同じだという仮説を立てたのだ。そしてその仮説は、ルビック星の一年の日数が地球の約2倍であるというジルの言葉によってある程度裏付けられた。
とはいっても、それだけで翔太の仮説が正しいと証明されたわけではない。ただ翔太は、自分の仮説によってジルが地球人と同じくらい生きられるということを千春にわかってもらいたかったのだ。仮に自分の仮説が間違っていたとしても、ジルが地球人の半分しか生きられないと千春に思ってもらいたくなかったのだ。ジルは千春の大事な友達であり、ジルが35歳くらいまでしか生きられないとなると千春が悲しむだけだ。千春にそんな思いをさせたくなかった。
翔太は複雑な思いで布団の中にもぐりこんだ。千春のためとはいえ、千春をだましているような気がしてならなかった。
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