第八章

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 「ところで何でこんな所にいたの?」千春は不思議そうに聞いた。  「黒くて大きな鳥がいて、ちーちゃんがくれたティアラを持っていこうとしたの」  「ああ、カラスね。カラスは光る物を集める習性があるんだよ」  「それで、その鳥を追いかけたら落っこちちゃって……」  「そんな、放っておけばいいのに……」  「でも、せっかくちーちゃんがくれたから……」  「そんなのまた作ってあげるよ。それよりジルのほうが大事だよ」  「うん……」  「それより、さっきの話の続きをしようよ。私、眠っちゃったから……」  「え? 続きって?」  「だんなさんの話。あと、子供のこととか」  「何でこんな時に?」  「そのほうが気がまぎれるから……」  ジルは気づいた。千春の左手が限界に達しているのだ。だから気をそらすために話題を変えようとしているのだ。ジルはあらためて自分の行動を後悔した。外に出なければ、鳥を追いかけなければ、千春がこんな事にはならなかったのだ。ジルは泣きそうになるのを必死にこらえた。  その時、下のほうから聞きなれた声がした。
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