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「ところで何でこんな所にいたの?」千春は不思議そうに聞いた。
「黒くて大きな鳥がいて、ちーちゃんがくれたティアラを持っていこうとしたの」
「ああ、カラスね。カラスは光る物を集める習性があるんだよ」
「それで、その鳥を追いかけたら落っこちちゃって……」
「そんな、放っておけばいいのに……」
「でも、せっかくちーちゃんがくれたから……」
「そんなのまた作ってあげるよ。それよりジルのほうが大事だよ」
「うん……」
「それより、さっきの話の続きをしようよ。私、眠っちゃったから……」
「え? 続きって?」
「だんなさんの話。あと、子供のこととか」
「何でこんな時に?」
「そのほうが気がまぎれるから……」
ジルは気づいた。千春の左手が限界に達しているのだ。だから気をそらすために話題を変えようとしているのだ。ジルはあらためて自分の行動を後悔した。外に出なければ、鳥を追いかけなければ、千春がこんな事にはならなかったのだ。ジルは泣きそうになるのを必死にこらえた。
その時、下のほうから聞きなれた声がした。
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