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「千春、お前そんなところで何やってるんだ!」翔太が下から千春に向かって叫んだ。
「翔ちゃ――ん、早く助けて。ちーちゃんが大変なの」千春の代わりにジルが声をかけた。
翔太は迷った。辺りを見回したが人はいない。大人を呼びにいこうと思ったが、時間がないと判断した。翔太は千春の真下に走り寄った。
「千春、手を放せ!」
「え?」
「大丈夫だ。俺が受け止めてやる。俺を信じて手を放すんだ」
「翔ちゃん……」
「何だ」
「……見ないで」
「見ないでって、何で」
「私、スカートはいてるから……」
「バカ、そんなこと言ってる場合か。見ないでどうやってお前を受け止めるんだ」
「だって……」
「わかった。スカートの中は見ない。約束する。だから早く手を放せ」
千春とジルは顔を見合わせた。二人は言葉を発せずにうなずき合った。千春は胸のところでジルの体を抱きしめ、大きく息を吸うと左手を放した。
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