第八章

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 「翔ちゃん、ありがとう」千春は翔太に言った。  「ああ、お前の体が軽くてよかったよ」  「翔ちゃんもたまにはうれしいこと言ってくれるんだね」  「たまにはって何だよ」  翔太は千春の体を受け止めることは出来なかったが、翔太の体がクッションになって千春はケガをすることはなかった。またジルも千春がしっかりと抱きかかえていたので無事だった。その代わり千春と翔太は泥だらけになってしまった。  「服が汚れちゃったね」  「服は洗えばいいさ。それよりお前とジルがケガしなくてよかったよ」  「翔ちゃんもね」  「そうだな。ところで、何であんな所にいたんだ」  「うん……ジルが落ちそうになって、シーツにつかまっていたの。それで助けようとして……」  翔太は千春の部屋のほうを見上げた。まだシーツが風にはためいている。  「それって、シーツをゆっくり上に引っ張り上げればよかったんじゃないか」  「あ……」  「やっぱりお前はバカだな」  「そうかもしれない。でも……」  「でも何だ」  「ジルがそんな状態だったら、あせっちゃうよ。それに、少しでもジルのそばに寄りたかったし……」  「そうだな。さっきのバカは取り消すよ」  「うん」  「じゃあ帰るか」  千春と翔太は自宅に向かって歩き出した。  「ねえ、翔ちゃん」  「何だ」  「スカートの中、見てないよね」  「え、あ、ああ、み、見てないよ」  「本当に見てない?」  「見てないよ、クマの絵柄のパンツなんか……」  次の瞬間、千春は翔太の体を突き飛ばしていた。
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