第九章

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 いよいよジルを見送る時刻になった。  千春は母親に友人の家に行くと言って家を出た。また帰りは車で送ってもらうと伝えておいた。母親に嘘をつくのは心苦しかったが、ごみ処理センターから帰るのが遅くなって母親に心配をかけたため、今回は心配をかけないようにしたのである。  千春は翔太とともに原っぱへ向かった。ジルを袋には入れず、両手でしっかりと抱いていた。ジルの感触をその手に残そうとしたのである。ジルの頭には、千春があらためて作ったティアラがのっていた。  やがて千春と翔太がは原っぱに着いた。大通りから離れているため、人影は全くない。約束の時間にはまだ十分ほどあった。千春とジルにはもう少し一緒に過ごす時間が残されたことになる。  「最後に話をしておいといたほうがいいぞ。俺は離れたところにいたほうがいいか」翔太は気を使って千春に言った。  「いいよ。翔ちゃんもジルの友達じゃない」  「そうだな」  千春はあらためてジルの顔を見た。言いたい事はいっぱいあったが、何を言えばいいかわからなかった。  「ちーちゃん……」ジルはか細い声で言った。  「何?」  「……さみしくなるね」  「うん……でも平気だよ。だって、私たちにはそれぞれ家族や友達がいるでしょ。私にはママがいるし、離れているけどパパがいる。翔ちゃんや亜里沙ちゃんがいる。ジルだってだんなさんや子供がいるし、友達がいるでしょ。だったらさみしくないよ」  「……そうだね」  その時、空に一筋の光が見えた。
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