戒めのシルバーアウェアネスリボン

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戒めのシルバーアウェアネスリボン

アウェアネスリボンといえば、乳がんの早期発見等を訴えるピンクや、LGBTQ等への理解・賛同のレインボーなどが有名だが。 私はシルバーを身に着けている。バッグにはキーホルダーを。先日の和楽風天(わらくふうてん)主催の撮影会にはシリコンブレスレットを。 それぞれのカラーが担当する意味は、ひとつだけではない。シルバーにもいろんな意味がある。その中で私は、「脳に起因する病気」という意味を選び取った。 父を脳梗塞で逝かせたことは、私にとっては不覚でしかない。 脳梗塞の癖がある父を近くで見守りたい――それも実家に戻ってきた理由のひとつだったのに。 思い返せば、もっと早くに事態を好転させることは、可能だった。ただ私が、いつの間にか気づけなくなっていた。 外で暮らしていたときは、実家の様子に的確な判断を下すことができたのに。母の対応に「それじゃ手遅れになるよ。すぐ病院に連れていかないと!」と言っていたのに。 両親と一緒に暮らしているうちに、私も母と同じになっていた。距離が縮まることで、かえって鈍くなるものもあるのだと知った。 私がシルバーのアウェアネスリボンを身に着けるのは、だから、「戒め」である。 誰かの異変にすぐ気づけるように。 もう二度と、見逃すことのないように。
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