心というものが煌めく珠なれば 〜心珠精神科医・藤堂縫のカルテ〜

8/12
前へ
/12ページ
次へ
 昼頃、縫も聞き込みに同行させてもらった。  “心珠”の模様が大きく変わることは、ない。それでも、“心珠”を変えたいと縫の元を訪ねる人は少なからずいる。氷愛華もそのひとりだった。“心珠”に関するトラブルがあったのかもしれないと、縫は考えた。  話してくれたのは、ハワイアンカフェでアルバイトをしていた、氷愛華の高校時代の同級生だった。  彼女曰く、氷愛華は彩子に虐待されていた疑惑があった。彩子は情緒不安定で、氷愛華に彼氏ができたと思い込んで高校に乗り込んできたことがある。彩子はその後、「娘に殺される! 助けて!」と荒れた。  氷愛華は携帯電話(ガラケー)を解約させられ、誰とも連絡を取れなくなった。同じ時期に、氷愛華は利き手である右手に包帯を巻くようになった。  氷愛華の“心珠”は、昼間は蕾のような模様があるが、夜は蓮の花のような模様に変わる。それも彩子の怒りを助長させた。はしたない、、“心珠”の中身を変える努力をしろ、と怒ったという。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加