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「由奈、忘れ物ない?」
「もう、小学生じゃないんだから大丈夫だってば」
「本当〜?」
「なずなは心配性すぎるの!」
今まで意識したことがなかったけどわたしの誕生日は成人式と丸かぶりするらしく、確かに祝日が多かったな、なんて今になって思うのだけど、こんな分かりやすい区切り、逆に助かるな〜なんて思ってしまう。十八歳、成人を迎える日と成人を祝う日が重なっているなんてのは実に分かりやすい。
「由奈、成人おめでとう」
「うん」
「えっと、その、ほら」
「なずな、たじたじしすぎ」
まるで小学生のわたしみたいだ。顔を赤くして下を向くなずなに少し意地悪をしたくなってあえて黙ってみる。
「もう、大人をからかわないの!」
「わたしも今日から大人だよ?」
「あっ、そっか……」
苦笑いするなずなを真っ直ぐ見据えてぐいっと近寄る。
「24歳まで待っててくれてありがと。ずっとずっと好きでいてくれてありがと。わたしはなずなが好きです。だから──」
「──ちょっと、ちょっと待って私から言わせて。昔は由奈が言ってくれたから。由奈、好きです。付き合ってください」
今日は雪も降る寒さなはずのに、思い出すのはあの日の真夏の日差し。わたしたちだけを照らしていたような夏のスポットライトに、蝉の声。伝う汗と、震える手。
「はい。よろしくお願いします」
「やった〜!由奈、おめでとう!」
「ちょ、ちょっと琉香いつから聞いてたの?」
突然抱きついてきた琉香に驚くわたしとなずな。
「ふふん、最初からそっちで見てたよ〜うちだって7年もそわそわしてたんだからね〜?」
「うん、まあ、そっか。そうだよね、琉香が居なかったらこうはなってないし」
そう、あの時芽生えた不安な気持ちをそのままにしていたら今なずなとこうはなれていなかった。それを後押ししてくれたのは、腕を引いて息ができるように水面に引き上げてくれたのは琉香だったから。
「琉香、その格好似合ってるよ」
「ふふ、でしょ〜?」
細身のパンツスーツに金髪ショートの琉香は凄くかっこよくて。晴れ着姿のみんなとは少し違うけれど、あの頃の琉香と何も変わっていない。琉香は琉香の可愛いを、かっこいいを、貫いているだけだった。
「うん。めちゃくちゃかっこいいよ。やっぱり琉香はなんでも似合うね」
「えへ、ありがと。ほら、写真撮ってあげるから並んで並んで」
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