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眠さが限界に達した放課後。バトンクラブに入ってる琉香と別れてひとり歩く帰り道と大きな欠伸。わたしも何かのクラブに入れば良かったかな、なんて思うのは何度目だろう。いつも琉香と一緒にいるから、クラブがある日の帰り道は少し寂しい。明るく隣で笑ってくれる琉香がいればわたしも明るく笑えるのに。何か具体的な、特段嫌なことがあったわけでもないのに目線は下を向いて、削れて読めなくなっている「止まれ」に足が止まる。
「はぁ」
ため息が漏れて、さっきまでぐにゃぐにゃで形にならなかった憂鬱がきっちりとした形になる。そんなわたしの横を自転車に乗ってすごいスピードで走り抜けていく低学年の男子たちはなんだかすごく楽しそうで、羨ましい。ここ最近、いつもそうだ。何かに悩んで、憂鬱で。誰かが楽しそうにしていると羨ましくて仕方がない。何かに対してチリチリと胸が痛くて、ずっと眠っていてしまいたくなる。一体、何に悩んでるんだろう、わたし。今日のテストも上手くいったし、自慢の親友の琉香だっているのに。
「由奈」
とくん、と跳ねる心臓とランドセル。
「なずなちゃん」
近所に住む、小さな頃から仲良しのお姉ちゃん。今年高校生になって着ているセーラー服はキラキラしていてすごく似合ってる。冬服の紺色も可愛かったけど、夏服の白い半袖のセーラー服はどこかの少女漫画にでも出てきそうですっごく可愛い。
「由奈も帰り?私も今から帰るとこだから一緒に帰ろうよ」
「うん」
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