0人が本棚に入れています
本棚に追加
「ねえ、由奈さ、最近変じゃない?」
「え、変?」
次の日、登校してすぐに昨日とは違う雑誌を広げながら席にやってきた琉香がそれそこ変なことを言ってきた。
「うん。いつもうわの空っていうかさ、何か悩み事とかない?」
「悩み事……ん〜、なんか」
「なんか?」
「何に悩んでるのか分からなくて、悩んでる、みたいな?」
自分でも上手く言葉にできないことが人に伝わるわけがない。きゅっと目を閉じて、言ったことを後悔しているとやさしく温かい琉香の手がわたしの手を包んだ。
「一個一個、確かめてみよ。ね?」
なぜかわたしは泣きそうになって、琉香に促されるままにひとつずつ原因を探っていくことにした。朝の会まではまだ少し時間がある。先生が遅刻したりして、たまにある自習になったりすればいいのにって思った。それだけ居心地が良くて、今が安心だった。
「じゃあ〜、家は?お母さんとかお父さんとか、あ、お兄ちゃんとかと喧嘩したりは?」
「ううん。普通に仲良いよ。昨日もお兄ちゃんとゲームした」
「違うか〜。学校……はうちがいるし、見てる限り大丈夫そうだけど、どう?」
「うん。学校は琉香がいるし楽しい」
「なんか照れるね」
琉香はいつもの癖で毛先をくるくるさせて少し上の方を向いた。そしてはっとして、再びわたしの顔を見る。
「ねえ、好きな人できたんじゃない?」
「えっ?」
好きな人、そう言われて浮かぶ一人を必死に掻き消した。違う、違う。
「……図星、じゃない?」
「好きとかじゃないっていうか、好きだったらおかしいっていうか、変っていうか」
「なにそれ。どういうこと?」
最初のコメントを投稿しよう!