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「え、これって両思い?」
ポロッと口からこぼれた言葉。
「そう。そういうこと」
あっけらかんと明るい笑顔のままそれを認めたなずなちゃん。
数秒して、なんだかおかしくなったわたしたちは笑いあった。炎天下の中で告白をして、何だかんだあってそれがオーケーされて、気づけばふたりとも汗だくだ。今までずっとうたた寝していたみたいに、そしてそれから目が覚めたみたいに全ての五感が敏感になる。音、蝉の声。見えるもの、キラキラしたなずなちゃん。香り、雨上がりの土臭さ。感触、こめかみを伝う汗。味、なんだか恋って、甘い。
ずっと止まっていた映画を再生するみたいに、町が動き出す。ぐずぐずしていたのが嘘みたいに、好きって気持ちが湧き出して伝えたくなる。なずなちゃんを置いて少し先まで走る。重いランドセルが跳ねて跳ねて、肩にくいこむ。けど、そんなのどうだっていい。
「なずなちゃーん!」
「ちょっと待って由奈早いってば」
「大好きー!」
「えっ、え?分かったってば、分かったよ、もう」
今度は逆走して真っ赤な顔をしてるなずなちゃんの元へ行く。走りたくってたまらなかった。伝わること、伝えること。受け入れられること。それら全てが嬉しかったんだ。
「大好き」
わたしの気持ちがアスファルトに反射してなずなちゃんを照らす。夏の照り返しに負けないくらい。
「由奈、早く大きくなってね」
「なずなちゃんも大きくなっちゃうけどね」
小学校の校庭から聞こえてくる楽しそうな声に負けないくらい、わたしたちは笑い合う。
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