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外には深い森。
そして、その深い森をさらに幻想的に見せる朝靄が立ち込めていた。
森の香りと乳香のものではない香の香りが混ざる中、真珠は起き上がり、ベッド下に用意してあったウォーターヒヤシンスのサンダルを履くと、バルコニーに出てみた。
バルコニーの向こうは深い谷になっていて、外からここには侵入できそうにない。
よく見ると、森の左手には開けた場所があるようだった。
幾つか突き立って見えるのは、シュロ葺きの多重塔。
寺院があるようだ。
そこから少し離れた場所には、異国的なのに懐かしい感じのする、アランアランの茅葺き住居が建ち並んでいる。
耳をすませば、何処からか、金属的なものに雨粒が落ちてリズミカルに弾いているかのような不思議な音楽が流れてきている。
ガムランの音だ。
え? なにここ。
……まさか、バリ?
いやいやいやっ。
私、谷中の超日本家屋な家で寝ていたはずなんですけどっ。
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