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寺院の側にある湖を眺めてたとき、ノックの音がした。
ホテルの従業員のような黒っぽいカッチリしたスーツを着た侑李が朝っぱらから爽やかに微笑み、現れた。
銀のトレーに載せたフレッシュジュースを手に、唐突に言う。
「真珠様、好きです」
……やはり、夢のようだ、と真珠は結論づけた。
侑李さんがそんなこと言うはずないもんな。
だが、侑李が引いてくれた渓谷に向かって張り出したバルコニーの椅子に座り、ジュースを飲むと、ひんやりした絶対に夢ではない液体が口の中に飛び込んできた。
「ひとりでお食事なさるのが寂しいのなら、ご一緒しましょうか?」
あ、じゃあ、と言いかけたとき、彫刻の施された重い木の扉が開き、桔平が現れた。
「なについでに口説いてんだ、侑李。
真珠、このホテルはどうだ?」
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