旦那様が谷中にやってきました

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「だが、お前が可愛いせいで、約束の時間ギリギリまでいちゃついてしまった。  おかげで失敗するところだったじゃないか」 と文句を言われてしまう。  日が昇ってきて、朝靄も消えると、渓谷を覆う鮮やかな緑が目に入った。  靄が晴れると、日本の森だなあ。  でも、向こうにバリっぽい寺院や住居が見えるから、バリって感じするな。  異国情緒あふれる音楽を聴きながら、清々しい森の風に吹かれる。  フルーツに合うスパークリングの日本酒を呑みながら、真珠は呟いた。 「なんか……贅沢な時間ですね」 「そう思ってくれてよかった」 と桔平は微笑む。 「お前と結婚してつくづく思ったよ。  俺は――   お前を贅沢させるために金持ちに生まれてきたんだな。  ……だが、お前自身が贅沢を望んでいないのが問題なんだが」 と桔平は真面目に悩んでみせる。  笑ってしまった。
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