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真珠、と桔平がテーブルの上に置いていた真珠の左手を握ってきた。
「俺と出会ってくれてありがとう」
「え?」
「俺と出会える場所に生まれてきてくれてありがとう。
お前と過ごすようになって。
毎日が楽しい。
だが、すごく怖くもなるんだ。
なにかひとつ間違っただけで。
なにかひとつの出来事が起こらなかっただけで。
俺とお前が出会ってない未来もあったんだなと思うと。
例えば、うちのじいさんが、もういいやと思って、ご先祖様の証文を燃やしてたら、それで終わりだったしな」
「じゃあ、おじいさまにありがとうですね」
「そうだな。
お前と出会ってから、俺はすべてのものに感謝しているよ。
……時折、隙を見て、お前に愛をささやく侑李にまでな」
と部屋の方で控えている侑李をチラと桔平は見るが、侑李は悪びれもせず、笑っていた。
身を乗り出し、そっと口づけてくる桔平に、真珠は言う。
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