旦那様が谷中にやってきました

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「私は――  まだずっと思ってます。  あのドバイへの旅から。  これ全部、夢なんじゃないかと」  今日もまた、こんなことするし、とちょっと拗ねてみせると、桔平は笑った。 「あなたの言葉もそのまなざしも、まだ現実のものとは信じられなくて……」 「なにを言ってるんだ、真珠。  この世界に俺のお前への愛以上の真実はないよ」  俺は一生お前に愛を囁き続けるよ、という桔平に真珠は言った。 「……ほんとうですか?  だんだん言わなくなるんじゃありません? そういうのって」  慣れ親しんだ夫婦になると、愛があっても、わざわざ口に出して囁いたりしなくなるのでは、と真珠は思っていた。  まあ、それはそれで愛かな、とは思うのだが。 「そろそろお時間ですよ」  バルコニーに出てきた侑李が微笑みを浮かべたまま言う。 「でもまあ、桔平様の方が永遠に愛を囁きつづけてもですね。  真珠様の方が、だんだん慣れてきて。  年をとったころには、はいはい、って聞き流すようになって。  耳に入らなくなってしまうかもしれませんね」 「……年とったら聞こえなくなるって、俺の愛はモスキート音か」 と桔平が侑李を睨む。
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