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桔平が愚痴り、侑李と真珠が笑いながら、部屋の大きな扉を開けると、広い廊下はまだ工事中だつた。
この部屋の前では静かに、と言われているのか。
そこだけは静かに通っているが、他では作業員の人が打ち合わせしたり、物が搬送されたりしていた。
「まだ作りかけなんですね」
「ああ、お前を運んだ部屋だけ先に完成させた。
お前を驚かせようと思ったからだけじゃないぞ。
なにも言わずにお前に見せて、どんな感想を抱くかリサーチしたかったんだ。
なんだかんだでお前は、子どもの頃からいろんなホテルを泊まり歩いているからな」
まあ、確かに。
貧乏になる前は、旅行好きの父に連れられ、いろいろ行ってますからね。
でも、私、小綺麗で立地がよければ、安いビジネスホテルでも満足な人なんで、私の意見が参考になるかはわかりませんけどね、
と苦笑したとき、背の高い男の人が黒めのスーツを着て、静かに立っているのに気がついた。
パッと目を引く、整った顔をしているが、物腰柔らかで、目立たぬように控えている感じだ。
支配人になる人かな? と思ったが、違った。
「高倉さん」
と桔平が声をかける。
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