旦那様が谷中にやってきました

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「ありがとうございました。  神室(かむろ)専務によろしくお伝えください」  どうもこの人が自分を運んでくれた人のようだ、と思いながら、真珠がぺこりと頭を下げると、高倉はやさしく微笑んでくれた。 「ちょっと向こうのヴィラを見て帰るか」 「いやだから、お仕事間に合いませんって」 と侑李が桔平を止める。  いつものように揉める二人を眺めながら、建設中のホテルの外に出た。  車に乗る前、真珠は足を止め、東の方を見る。  バリの茅葺き屋根の家を()したヴィラや湖に映る寺院につい目を奪われていると、 「もう~、五分だけですよ」 と侑李が言った。 「すぐに戻るよ」 と桔平が侑李と車の運転手に向かい言う。  真珠に手を差し出した。
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