旦那様が谷中にやってきました

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「行こうか」  朝日を背に、自分に向かって微笑みかけくる桔平を見て、真珠も微笑む。 「……なにも間違わなくてよかったです」 「え?」 「これまでの人生、いろんなことがあったけど。  すべてがここにたどり着くためだったと言うのなら――」  この道を進んできてよかったです、と桔平を見つめ、真珠は言った。 「今なら、私の人生に起こったことすべて肯定できそうです。  どんな不幸も、きっと、あなたと出会うために起きたことなんですよね」 「真珠……」 「あの日、自転車で溝にハマったことも。  早めに行ったはずが、大学の受験会場間違って、ギリギリの時間に行ってしまったことも。  きっとすべて、あなたに出会うため――」 「違うと思うぞ」  言い終わる前に、そう言われてしまう。
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