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俺と涼子が付き合い始めたのは大学三年生の時だ。サークルで毎日のように顔を合わせて、自然と恋人のような関係になったのだ。ケンカもほとんどせず、仲は良かった。
それは社会人になっても同じだった。週末は必ず会い、デートをした。おそらく俺たちは結婚するのだろう。きっと彼女も同じ気持ちだったはずだ。ところが、社会人になって三年目、俺の海外転勤が決まり事態は急変した。
ヨーロッパへ五年の勤務、それは恋愛を続けるには厳しいものだった。すぐに涼子に話したが、彼女は反対した。もし海外に行くなら別れる、そう言ってきたのだ。
俺は何度も説得した。会社でのステップアップのために必要なんだ。五年なんてすぐだ。ヨーロッパでもテレビ電話できるから。どんなことを言っても涼子は聞こうともしなかった。
「きちんと話をしたいから、今日の夜八時に会いたい」
フライトの一日前、俺は彼女にこう言った。まだ俺たちの話はまとまっていなかった。今日中に何とかしないと、どうしようもなくなる。俺は彼女に電話で駅前のレストランの名前を告げた。
しかし、時間になっても彼女は現れなかった。一時間、二時間と過ぎたが、彼女が来ることはなかった。閉店時間になり、俺は諦めて家に帰った。翌日、俺は予定通り旅立ち、そこから彼女と会うこともなかった。
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