とりころーる

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恋患い《こいわずらい》、という言葉がある。 それは文字通りで恋募る気持ちのあまり病気になってしまう、という意味。 かつては叶わぬ恋、成就することない恋に命を落とした者もいたという。 放課後、高校生の私は下校のために校舎廊下を歩いていた。 大地へと眠りにつこうとするオレンジの太陽が廊下を染め、それは誰もが心の内に持つ故郷へのノスタルジーを抱かせる。 私以外に生徒の姿はなく代わりに校庭から聞こえる運動部の声、部室から漏れる文化部の談笑が遠く響く。 だからこの空間を支配しているのは私の靴音のみでまるで自分ひとりの世界いるようだった。 同じクラスのとある男子生徒の彼は悩みを抱えていた。 それを癒してあげられるのは私だけ。 私にしかできないこと。
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