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「…散らかってるけど…」 「あ、おじゃまします…」 結局、拾った猫を家まで連れてきてしまった… 彼女は、玄関に突っ立ったままだ。 「それから、いくら、きみが強引だとはいえ、女の子を玄関先で寝かせるのは、嫌だから、ちゃんとあがって。」 「あ、はい…」 「それから、これ、使って」 「え?」 僕は新しいタオルと、たまたま、こないだ買っておろしてないウニクロのシャツと、随分はいていないジャージを箪笥から引っ張りだし、彼女に渡した。 「シャワー、浴びてきたら?風邪引かれても困るから。…その…変な意味はないから」 僕は、彼女に背を向けたまま、話した。 「ぁ…はい」 彼女がシャワーを浴びる音が聞こえる。 家出ったって…なんの当てもなく、よく飛び出したな… はぁ~こんなはずじゃなかった… でも、仕方ない… 雨の中、あのまま放っておくこともできたのに、声をかけたのは僕の方だ… あの状況で未成年を放っておくのも、大人として、どうかと思うし… そんな風に、僕は、いま起きている事態を、自分に納得させようとしていた。 愛読している美術雑誌をペラペラめくっていた。 「あ…あの…シャワーありがとうございました」 雨に濡れ、雑踏のせいで薄灰色だった野良猫は、真っ白な白猫だった。つやつやと毛並みも良く、纏っているものが申し訳ないくらい、品があった。 「…どうぞ…。冷蔵庫ん中、好きなの飲んでいいよ。あ、でも、アルコールはやめてくれよ。こんなことで、警察に捕まるなんて、ごめんだからな。」 「は、はい」 僕は、ぶっきらぼうに、そう言うと、彼女と目を合わさないようにして、シャワーへと向かった。
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