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「お腹すいた。なんか食べたい。」 彼女は、そういうと立ち上がった。 手足が長く、立ち上がると、僕とたいして変わらなかった。 「ビックマック、セットで。コーラ。あ、ポテト、Lに変えてください。」 そこまで、言うと、彼女は僕の方を振り返った。 「あ、じゃあ、コーヒー、ホットで。」 僕が注文していると、彼女はスタスタと席を探しに店内を歩きだした。 え?ちょっと、見知らぬ男に払わせるのか? 僕は彼女の態度に、内心イラッとしながら会計をすませ、彼女のあとを追った。 窓際の席に座った彼女は、黙ったまま、窓の外を見ている。 「はい、どうぞ。」 「いただきます。」 よほど、お腹が空いていたのか、彼女はハンバーガーにかぶりついた。 "この娘、なんなんだ…そういう僕も、なにやってんだ…" 自分にため息が出た。 「食べる?」 彼女がポテトを差し出している。 「いや、いらない。」 「ふーん。」 食べたら体温が上がってきたのか、死人のように赤みのなかった彼女の顔に、少し温かみがもどってきた。
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