憧れのLC2

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「ね、この子の名前、そろそろ候補を絞らないと」  私が姓名判断の本から選んだ名前を夫に見せる。二人は赤ちゃんの性別を産まれるまで聞かないつもりだ。 「そうだな。えーと。男の子なら……あ、そうだ。言い忘れてたけど、上司がベビーカーくれるって」 「えー。良いなって思ったの見つけたのに」 「まあ、いいじゃん。他のにお金かけられるしさ」 「もう欲しいって返事しちゃったわけね」 「……うん。明日の夕方に持って来てくれるって」 「じゃあ、何かお礼しなきゃね」 「明日、検査の帰りに一緒に菓子折り買いに行ってくれる?」 「はいはい」  夫の多少強引なところは、母親譲りなのを最近知った。うまく付き合うことが出来るだろうか。 「そうやっていつかさ、ル・何とかのソファー、買えたらいいよね」 「え?」 「時間はかかるかもしれないけど」 「本当に気の長い話ね……」  夫はル・コルビジェ LC2の写真を見て、格好良いよなあと呟いた。 「頼りにしてるわ」  夫は嬉しそうに笑った。 了
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