Reborn

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「好きなの食べてて。シャワー先に浴びてくるから」 彼は、やはり恋人に言うみたいな台詞を投げかけて洗面所に消えていった。 雨に濡れたのだから仕方ない。 それは分かっているが、茉子は胸がドキドキして止まらなかった。 「バカみたい。年甲斐もなく・・・・」 と、彼が買ってきたツナマヨのおにぎりのビニールを剥いた。 茉子は本気で死ぬ予定だったから、荷物らしい荷物は持ってなかった。 けれど、ジーパンのポケットに忍ばせた物だけは、どうしても置いてこれなかったのだ。 食後に毎回飲んでいた物だ。 何かを食べるまで必要のない物だ。 袋の中に水があるか確認する。 ミネラルウォーターがあって安心する。 茉子は思わず泣き出してしまいそうになる。 死のうと決めて家を出たはずなのに今、自分はツナマヨおにぎりにかぶり付いている。 鼻の横をつたう涙が唇に届くと、しょっぱさがツナマヨの味に混じってしまった。 「やだ・・・もう」 茉子は泣きながらツナマヨを水で流しこんだ。 「美味しい・・・・」 呟いたら、また涙が溢れてきた。
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