Reborn

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とても悔しいけれど、彼の言った通りこの店のカニクリームコロッケは絶品だった。 有無を言わさない、というのはこういう味の事なのだろう。 茉子は店主の顔を見た。 店主もこっちを見ている。 茉子と目が合うと、店主はニコッと微笑んで厨房の奥へ消えた。 「そっかぁ・・・」 茉子が呟く。 「ん?どした?ロジャー」 カニクリームコロッケを完食したばかりの彼が聞いた。 「美味しいものを食べた時って、美味しいって言うじゃない?テレビとかでもさ、まろやかですね~とか、コクがありますね~とか」 「うん」 「でもね、今気づいたの。本当に美味しいものを食べた時って、何も言えなくなるんだな、って」 茉子の言葉に彼は大きく頷き 「お。初めて僕と意見が合ったね、ロジャー」 と嬉しそうに水を飲んで 「お次のタンシチューは言葉どころか口ごと無くなるかもしれないよ?」 と、笑いながら言った。
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