Reborn

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タンシチューの、ほろ甘さが唇の端にまだ残っている。 彼が、あまりに無邪気に 「世界一のタンシチューだろ?」 と言っていた意味がやっとわかった。 一定のリズムを刻む彼の両脚と、世界一の食事をして倍くらい逞しくなった彼の背中が愛しくなるほどに、茉子は彼に寄りかかって、うとうとと眠ってしまいそうになっていた。 「寝るなよ!危ないぞ!」 彼は背中にも目があるんだろうか。 彼の背中を通り抜けて、茉子のおでこに響くその声に度々叩き起こされ、2人は目的地へ着いた。 「今日の宿は、ここ」 円を描くように車輪を道路に寄せると、そこには眠気が吹っ飛ぶような大きな建物があった。 「高級旅館!?ここに泊まるの!?」 茉子は夢を見ているようなフワフワした気持ちで彼を見た。
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