Reborn

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部屋に入ると夕食の準備が出来ていた。 白地に朝顔の柄の浴衣を着た彼が胡座をかいて座っていた。 「ごめんね。お待たせ」 茉子は短い髪を1つに束ねて1階のお土産屋さんで買ったバレッタで留めていた。 「なんか、雰囲気変わるね」 「遠回しに言わなくていいよ。オバサンのスッピンごめんね」 茉子は拗ねたように言う。 「そういう意味じゃないよ。冗談抜きでロジャー、化粧とると若くなるのな」 「もう、お世辞はいいから。さぁ、食べよう。すっごく美味しそう!」 伊勢海老がパチパチと音を立てている。 赤く染まるのを見ながら、味噌田楽を頬張ると春の香りが一気に口の中に広がって驚かされた。 「これ!この香り、なんだっけ?」 彼がモゴモゴしながら聞いた。 茉子は年の功と言わんばかりに 「ふきのとう」 と自慢気に答えた。 「そうだ!ふきのとう!久しぶりに食べたなぁ・・・前に食べた時はあまり美味しいって感じなかったけど。旨いや」 ふふ、と茉子は笑ってしまった。 「オコチャマ舌から大人舌におなり遊ばしましたか」 「からかうなよ」 彼がむくれた。
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