Reborn

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なんだか、とても不思議な光景だ。 どうして私は親子ほども歳の離れたこの青年と旅館で伊勢海老なんぞを突っついているのだろう。 あの日、あそこで死のうとしなければ出逢わなかった2人。 人と人の出逢いというのは、未来に何かをやり遂げる為、もしくは、未来に向かって何かを築く為に出逢うんじゃないのだろうか。 私と彼は、何かをやり遂げる? 私と彼は、何かを築く? 茉子は、三ツ矢サイダーの気泡を見ながら 「気分だけはビールだよ」 と酔ってもいないのに顔が赤くなっている彼を見て思った。 この出逢いに未来はある? それともこれは今世最期の晩餐? 今世最期の幸せのかたち? 茉子は神様に訊ねてみたかった。 こんなに和やかで満ち足りた夜はない。 ゆっくり、月は満ちてゆく。
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