Reborn

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彼の大きく出っ張った喉仏がゴクリ、ゴクリという音とともに動く。 若いなぁ、と思った。 私も結婚をして息子がいたら、この子くらいの年齢だろうか? そんな事を思いながら茉子は彼を見つめた。 「オバサンは?何か飲む?」 そう言って、茉子の返事を待つ間もなく、彼は小銭を自動販売機に入れてしまった。 「あっ!!」 もう何もお腹に入れる気がなかったけれど、せっかくお金を入れてくれた若者に悪い気がして、茉子はコーラを押した。 すると、プッ、と彼が笑う。 「死ぬ前にコーラって」 「おかしい?」 「いや、なんか、死のうとする人はお茶とか選ぶのかなって」 「そう?いいじゃない。死ぬ間際にコーラ飲む人がいても」 「確かに」 彼はそれ以上何も言わなかった。 茉子は死ぬ間際に飲むコーラも、コーラはやっぱりコーラだと思いながら飲んだ。 死ぬ間際に食べるたい焼きも、死ぬ間際に食べるもつ鍋も、死ぬ間際に食べる回鍋肉だって、所詮何も変わりはしないのだろうな、と。 アクエリアスを飲み干した彼は 「さて。行きますか。死の淵サイクリングの旅へ」 と無邪気な顔をして自転車を跨いだ。
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