Reborn

40/73
前へ
/73ページ
次へ
障子に川の流れているような模様が透けて見える。 太陽の位置が高くなった。 彼はまだ起きる気配がない。 茉子はそっと布団から抜け出し、丸まった彼の身体に布団をかけた。 女将さんが用意してくれたお粥を食べる。 優しくて、懐かしい味がする。 小さい頃、熱が出て食欲が出ない時に母が作ってくれたお粥に似ている。 母の事はなるべく思い出さないようにしていた。 茉子の母は、自殺した。 人は、こんなにも脆く、儚く、簡単に命を落とすのかと幼い茉子は絶望した。 茉子が一番つらかったのは、母親がこの世から居なくなった現実よりも、母親が居なくなったこの世の中で、自分が生きていかなければならない事だった。 生きていくなら、人は、何があっても食べなければならない。 その苦しさが、茉子を支配していった。 長い時間をかけて、茉子の心と身体を蝕んでいった。
/73ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加