Reborn

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不思議だった。 1人で暮らしていた頃は、朝も晩も、ほとんど何も食べずに過ごした。 食べても食べなくても、どうせ失くなる命なんだと半ば投げやりな気持ちでいた。 彼が傍に居るだけで、何故、こんなにもお腹がすくのだろう。 「全部、食べちゃった」 お粥も茶碗蒸しも全て平らげてしまった。 彼に出逢ってからというもの、茉子はずっと食べ続けている。 「お。偉いじゃん」 自分よりずっと年下の彼に褒められると、くすぐったいような変な気持ちになる。 茉子は病院から処方された錠剤を口に含んだ。 「それって死ねない薬、だっけ?」 悪戯っぽく彼が言う。 「そう。痛みを誤魔化す脳に悪い薬。麻薬みたいなものよ」 と、茉子も悪戯っぽく返した。
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