Reborn

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ギィ、ギィ、と錆びた音がする。 ずっと寝起きを共にしてきた黄色い自転車が悲鳴をあげている。 さすがの彼も漕ぎにくいようで 「クッソッ。ボロチャリが」 と汚い言葉で仲間を罵った。 「ねぇ。修理に出してあげようよ。このままだと壊れちゃうわ」 彼は面白くなさそうに 「もう少しで隣町に出るのに」 と、自転車から降りて歩き出した。 茉子も、彼らの後ろをついて歩く。 海風が、海岸から押し上げるように2人の髪の毛を靡かせていく。 潮の匂いがツンとする。 鼻の奥に苦い感触が残っていく。 砂がジャリジャリして、唾を吐きたくなるのを我慢しながら2人は歩いた。 それもこれも、黄色い仲間の為だ。 私たちを乗せてきた彼の明日からの未来の為だ。
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