Reborn

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潮風にさらされて、トタン屋根の捲れかけた板がバンッ、バンッ、と音を立てていた。 錆びた看板には"直己サイクル"と書かれている。 「すいませーん」 彼が店の中に入る。 「はーい」 奥から現れたのは白髪のお爺さんだった。 老眼鏡を胸ポケットから出しながら 「具合が悪いんかい?」 と茉子を見て言った。 一瞬、茉子は自分の具合を聞かれたのかと、ドキンとした。 そんな訳ない。 自転車の具合を聞いているのだ。 「ちょっと、漕ぐと音がするんです」 「錆びがきとるかな。ちょっと見せてね」 お爺さんはヨッコラショ、と歳を感じさせないくらい黄色い自転車を軽々と持ち上げて店の中に入れた。 タイヤをクルンクルンと回して、指先でゴムを押したりしている。 「空気圧も調整しとくね。しばらくかかるけど、どこか回ってくるかい?」 と、店の時計を見ながらいった。
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