Reborn

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「どこか・・・って言ってもなぁ」 「この辺って何もないよね」 2人は海風が吹きすさぶ道路をひたすら歩き回った。 ある店といえば、店の前にイカやアジの干物がクルクル回っている海鮮加工店だけだ。 「お腹すいたなぁ」 彼がウロウロと見渡して、疲れ果てたように呟いた。 「私も。お粥しか食べてないから」 と茉子も舌を出した。 「戻って、オッサンに聞いてみるか」 と彼と茉子は来た道をまた戻り始めた。 強い風に煽られて、彼のTシャツの裾が翻るのを後ろから見ていると、不思議と幸せな気分になった。 茉子とは違い、今目の前にいる男の子は生命に満ちている。 この子はきっと、これから先何があってもこうやって強く生きていくんだろう。 こうやって、Tシャツの裾を翻して意気揚々と。 そんな満ち足りた逞しい背中を見ていたら、急に彼が振り向いて 「干物買って帰ろうか。で、オッサンの家で焼かせて貰おう!」 と勝手な事を至極当然のように言って笑った。
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