Reborn

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「なんにも無かったやろ?」 散々近所を歩き回って、自転車屋に戻った途端お爺さんにそう言われて、茉子は気が抜けてしまった。 なんにも無いなら初めからそう言ってよ! 茉子はそう難癖つけたい気分だったが、彼は 「そうなんすよ!なにも無くて帰って来ました!」 とあっさり認めて笑っている。 「いい具合になった。乗ってみてくれんか」 と、お爺さんは黄色いマブダチを外へ運んだ。 よいしょ、と彼がマブダチを跨ぐ。 「どれどれ・・・・」 彼が勢い良く走り出した。 「おーっ!!すごい!よく走る!!」 彼がマブダチと一体感を味わっているように見えた。 潮風と彼とマブダチ。 あそこに私が加わるのか。 茉子は1人、にやけ顔を必死に手で隠した。 すると、手に持ったビニール袋から干物の生臭い匂いが鼻を突いて、おぇっ、となった。
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