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七輪の上でアジが焼けている。
香ばしい匂いを乗せた煙が、茉子の顔を襲ってくる。
「まさか、ほんとに焼くなんてっ」
手で煙を払いながら茉子が言うと
「ちょうど昼休憩にしようと思ってたから」
と、自分の分の椅子を持ったお爺さんが茉子の隣に座った。
「ほらね。やっぱり買ってきて正解だった」
と、彼はジュワ~と脂が滲んだアジをひっくり返した。
「いい焼け具合だ。どれ、ご飯でも盛ってくるかいな」
と座ったばかりのお爺さんが立とうとするので
「場所、教えてくれたら持ってきますよ」
と茉子が立った。
「店の奥に台所がある。茶碗はどれでも使っていいから」
とお爺さんは嬉しそうに言った。
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