Reborn

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彼の行動は、不可解極まりない。 あの吊り橋よりも、もっと確実に死ぬ事ができる場所があると言って茉子を連れ出したのに、2人を乗せた自転車はどんどん山頂から離れて行くように見えた。 「どこへ向かってるの?」 茉子の問いに彼は答えず、ただ下り坂を下りていくばかりだ。 自転車は主道から脇道にそれて雑木林の中を抜けていく。 覆い繁っている葉っぱや枝が、通り抜ける茉子の腕を容赦なく切っていく。 「痛っ・・・。ねぇ、ほんとにこっちなの!?」 「間違えたかも」 「えっ!?」 「道、間違えたかもしれない」 彼は楽しげにそう言って 「地図あるから、確かめるよ」 と笑った。 それから暫く自転車を走らせて到着したのは登山客が雨風をしのぐだけに建てられたような掘っ建て小屋だった。 丸太で周りをぐるっと囲んで固定しただけの壁と、トタン屋根で出来た小屋だ。 彼はそこを自分の家のように 「たいした物は無いけど」 と、招待した。
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