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茉子は店内にズラリと並んだ自転車をすり抜けて靴を脱いで上がり框にあがった。
部屋は閑散としていて、数日分溜まった新聞紙が無造作に積み上げられていた。
卓袱台の後ろに食器棚がある。
ガラス戸を開けてお茶碗を3つ取って台所にいく。
炊飯ジャーを開けると炊きたてのご飯があった。
「おまたせ」
お盆にご飯と麦茶を乗せて茉子が現れた。
「麦茶すみません。勝手に」
と茉子が頭をさげると
「いや。ありがとう。ささ、お嬢さんも座って食べて」
とお爺さんは焼きたてのアジを茉子のご飯の上に乗せてくれた。
ロッキーは、といえば既にアジにかぶりついている。
「あちっ。うまっ」
茉子もアジにかぶりついた。
ほのかに潮の香りがする。
幸せだ、と思った。
「どうした?」
彼は俯いて動かない茉子を心配した。
茉子は頬をつたう涙を拭いながら首を振った。
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