Reborn

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「じゃあ僕から質問ね」 と、ロッキーの瞳がキランと光った。 「ロジャーは小さい頃、どんな子だったの?」 それは若干的外れな質問で、茉子は肩透かしにあったみたいだった。 もっとこう、大胆な質問をされるかと思ったからだ。 「もっとドギツイ質問のほうが良かった?」 彼はまた茉子の心中を見透かしたように笑った。 茉子は動揺を必死に隠して 「小さい頃、かぁ」 と自分の幼少期を思い出した。 盲点、だったかもしれない。 なぜ彼は、私の弱点をいとも簡単に探り当てる事ができるのだろうか。 私の幼少期。 それは真夏の暑さと比例して、夕方に突然降ってくるスコールみたいに、悲しみが降りかかる光景だ。 ぶら下がっている。 小さかった茉子にとってその光景は、ぶら下がっている、以外の何物でもなかった。 「何も、できない子供だった。ただ、見てる事しかできない。そんな子供だったわ」 てるてる坊主みたいに。 ざぁざぁと降る雨の中に、母がぶら下がっていた。
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