Reborn

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「そうと決まれば食材買ってくる。内鍵はちゃんと閉めてね」 彼がドアの内側についている鍵を指差す。 出で行こうとして、 「あっ。合言葉決める?」 と振り向いた。 「合言葉?」 「帰って来た時、僕かどうかわかんないでしょ?」 「わかるよ。ドア越しに『山、川』とか言ってる時点で君しかいないでしょ?」 「あっ、そっか」 彼は頬を赤くして、 「じゃあ、帰って来たら、山!って言います」 と恥ずかしそうに出て行った。 山に沈みかけた夕陽が、最後の光を振り絞っているように茉子の横顔を照らしている。 もう、あと数秒で太陽が沈む。 まさか、夕陽を見る事になるとは思わなかった。 自分は、もう二度と夕陽も・・・夕陽だけじゃなく、森も川も桜も風も・・・本も・・・若い男の子にも出逢える事になるとは思っていなかったのだから。
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