批評家A

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 つーっと冷たい汗が脇から流れおちていく。グレーのTシャツの脇は、もう汗染みで真っ黒だ。  そんなはずはないと思いながら、震える手でマウスを動かしアップルノベルへとアクセスする。短編コンテストの応募概要欄を上から舐めるように確認し……わたしは愕然とした。ノナメの言う通り、優秀作品は惜しくも賞にもれた上位15作品のことで、決して賞ではない。  冷たくなる身体とは裏腹に頭はカッと燃えるように熱い。わたしはなんて恥知らずだったのだろう。これは、わたしにしかできないことだなんて勝手に使命感に燃えて、批評の意味すら知らず人様の作品にああだこうだと……。  スレッドを削除してしまおうかと考える。でも、もしアップルノベルのユーザーがこの日記を読んでいたら? 批評家Aはわたしだと自白するようなものじゃないか。  ノナメの日記にはまだ続きがある。ここまできたら全文読もう。読まなければなにも判断などできないのだから。
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