批評家A

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 批評をすれば、みんなのためになる。ズバッと悪いところを言ったほうがいいに決まっている。みんな、わたしに感謝してくれている。そう思ってきたけれど、本当はノナメのように腹立たしく悔しい想いをした人もいるのではないか。プロに言われるならまだしも、わたしのような実績のない人間にああだこうだと言われて、それが参考になる? そんなはずがない。  スレッドの編集ページを開き、削除ボタンにカーソルを合わせる。長い間、続けてきた批評スレも今日で終わり。削除してしまえばそれで終わる。 「……」  この期に及んでやめたくないという気持ちがわきあがる。正直に白状すれば、他人の粗探しは楽しいものだった。ズバッと言ってやった日は特に気分が良くて、そのあとに飲むビールは最高だった。  そう。いつしか批評は、わたしのストレス発散になっていたのだ。  だからやめたくない。アップルノベルにおけるわたしの知名度は高い。批評といえばわたし。みんなこぞってわたしのスレッドへと集まってくる。素敵な企画をありがとうございますにはじまり、お忙しいとは思いますが是非ご一読願えれば……と締められる。みんながわたしにペコペコするのだ。こんなに気分のいいことはないだろう。
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