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交差点
商店街を抜けて大きな交差点で信号待ちをする。ここを渡って左に曲がり、ベンダーを2つ通り過ぎれば散歩終了。
幹線通り沿いに立つ自宅マンションがある。
大型トラックが何台もスピードを出して行き交う。流通を支える頼もしい存在に、心の中で感謝する。
その時、どぅ‥ん、と鈍く重い音がした。
車の急ブレーキの音、ガゴガゴと硬いものが引きずられる音。
やっちまったか!
と後ろにいた年配の男性が言う。
僕は警察と救急に電話をすると、咄嗟にスマホで何枚か写真を撮った。
2車線ずつのの大通り。ケータリングのバイクが交差点で右折したところに、対向車の宅配便のトラックが突っ込んだようだ。
トラックのバンパーに絡まるように、白い
バイクの車体が下敷きになっている。
トラックの運転席から、スマホを片手に緑色の服を着た運転手が降りてきて、巻き込んだバイクの状態を見ている。
バイクの運転手は交差点を過ぎた歩道寄りの植込みまで跳ね飛ばされている。
フルフェイスのヘルメットを被ったままで顔は見えないが、体は動いていない。
僕は、息を殺すように止まっている、対向車の間をぬいながら、散らばったバイクの破片らしい物を拾い上げ、路肩に除ける。除ける前には一応道路上の写真を撮る。証拠が必要だろう。
対向車線はのろのろと進み出した。
僕は、トラックの後方数メートルの道路上で
1車線に誘導を始めた。
少し太めの4色ボールペンを手にして腕を振る。
自転車に乗って警官が2人到着した。1人は怪我人に付き添い、1人は肩に着いたトランシーバーで話している。
救急車のサイレンが近づき止まった。
別の警官が自転車で歩道を走って来た。
「代わります」と言い僕と交代する。
回していた腕を下ろして僕は歩道にあがる。
怪我人は首に添え木を差し込まれて居る。
トラック、バイク、どちらにも非がありそうだ。僕はトランシーバーを離しトラックの運転手に話を聞き始めた警官に近寄ると、事故後の写真を何枚か撮ったことを伝えた。警官は、必要になった時に提供をお願いするからと、僕の連絡先を聞いた。
まだ騒然とした空気を漂わせる交差点を後にして、自宅のマンションへ戻る。
2時間も経てばいつも通りの交差点に戻るだろう。
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