ボーイ・ミーツ・ガール・オブ・ザ・デッド

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「......僕に出来ることは?」 「彼女を恐れず、側にいて話しかけてください。彼女の中に残された心は再び芽生えようとしています。貴方はそれを育てて花を咲かせてください。諦めずに希望という名の水を与えて枯らさないようにしてください」  担当医は指針をくれた。そのテンプレートだらけの三文芝居な台詞に迷いのない言葉の強さを感じた。 「恋を続けよう」  僕は無表情なままの彼女に誓った。  彼女は隔離室で拘束されていたが、人を襲う兆候は全く無かった。それどころか調整生肉食を頑なに拒否して口にしなかった。ベジタリアンとしての尊厳が残っているらしく、栄養は彼女の為に調合された植物性活性化プロテイン溶液の点滴で補われていた。 「おにぎりが大好物だったんです」  僕は自分なりに調べた原始米や全粒穀物で握った滅菌おにぎりを与える許可を貰った。  彼女がそれを口にして少し微笑んだ気がした。
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