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タブロイド誌が「日本にもゾンビが匿われ秘密裏に実験されている」とリークした。研究所の場所まで特定されていたが彼女に繋がる情報の記載は一切無かった。
情報漏洩の犯人探しが始まり、部外者なのに深く関わっている僕が疑われた。
彼女の担当医が委員会に僕の無実を証明してくれた。
「お前たちは彼の献身を知らないで無礼を働くのか! 少年の無償の愛がなければ彼女はここまで寛解しなかった。今すぐ彼に謝れ!」
温和な先生が声を荒げたのに僕は驚いた。彼は怒っていても相変わらず表現がストレートで心打つ。
やがて交換日記の絵は少しずつ意味を含み出す。相変わらず幼児レベルだけれど、僕にはその象形文字が読み取れる。
「これは......おにぎり? これは......電車?」
彼女はあの約束を憶えていた。
「実行しましょう。治療の大きな飛躍に繋がるかもしれません。今の彼女に必要なのはアクションとエモーションです」
担当医はそう言う。リスキーなのは承知の上で、警備員同行で電車の一両だけ貸し切り日常感を損なわないように注意を払っての小旅行だった。
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