ボーイ・ミーツ・ガール・オブ・ザ・デッド

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 どうすれば僕の小説や彼女の絵が美しく成長するだろう。 「僕たち恋をしようよ」  そう提案したときには既に始まっていた。それもボーイ・ミーツ・ガールのテンプレートの気恥ずかしいパターンだ。  僕は輪郭や印影や色彩を綴る。彼女は台詞や比喩や叙情を塗る。始まったばかりの小さな恋の交流が大きな創作の興隆になる悦びを知った僕ら。  メールや電話は敢えて控えた。この時代に不釣り合いな交換日記で、僕は散文を書き、彼女がイラストで応える。互いの返事は文章と挿絵の関係の不思議な一冊になる。  僕と彼女が出逢ったときに触れて落ちた童話も素敵な恋人たちの共作だって知っている。  その絵本は、旧ソ連のスプートニク号に載せられ宇宙に打ち上げられた巻毛の仔犬が二回ある死の意味を知る物語だった。  僕は何度も読んで、まるでメキシコの死者の日(Día de Muertos)に纏わる死生観に近いと思った。それは現世で肉体の消失による死と、仮世で忘却される心の存在の死の寓話だった。
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