ボーイ・ミーツ・ガール・オブ・ザ・デッド

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 彼女が死装束のまま雨に打たれ辿り着いた先は僕の家だった。  真夜中の窓の外に気配を感じた僕は飛び出した。既に泣ける限界まで泣いたのに強い雨に負けない存在感の涙の温度を眼球に感じながら、ずぶ濡れの彼女の冷たい身体を抱き締めた。  僕の心臓は早鐘を連打しているのに、彼女の胸は全く鳴っていなかった。  僕は彼女を大きなタオルで包み、先の御両親に連絡して事情を話した。迎えを待っていたら扉を叩いたのは防護服を着た特務職員たちだった。  不躾で乱暴に彼女を連れ去ろうとする連中の態度に激昂した僕は、職員の高電圧義手で気絶させられ公務執行妨害で一緒に連行されてしまった。未成年として罪に問われなかったが、彼女の濃厚接触者なので精密検査された。  海向こうでは、墓から蘇った死人の群衆が小さな地方都市を壊滅させ軍隊が制圧に向かったとの報道が流れた。火葬が主たる日本では痛痒のない対岸の火事だった。    内密な僕の彼女の事例を除いては。
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