レタス懐妊

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 深夜。全裸のトンビは私のシングルベッドでこんこんと眠っている。泣きすぎたせいもあるし、私を求め過ぎたせいだ。彼は情緒を回復するために私をよく利用する。でもそれでいいと思っている。  ベッドからそっと抜け出した私は冷蔵庫からよく冷えたレタスを取り出した。暗い室内でレタス一つがうっすらと輝いていて、そのことに私は神秘を感じた。  背徳感を抱きつつも静かにレタスを一枚むく。流水で軽く洗い、そのまま口に含む。 「……ああ」  自然とため息が出た。こんなにもおいしいレタスは初めてだ。ぱりぱり。ぱりぱり。生まれたてのレタスがこうもおいしいだなんて、どのくらいの人が知っているのだろう。これを食べるために私は生きてきたのかもしれない。ううん、きっとそうだ。  きゅうきゅうとレタスが泣いている声が聞こえたような気がした。 「また産んであげるからね」  そっとレタスを胸に抱く。レタスが乳を飲めないことを残念に思いながら、ひんやりとした曲線を何度も何度もなでてやる。 「また産んであげるから。約束よ」  なでる手でもう一枚レタスをむく。そして私は大きく口を開けた。その舌の先にレタスの新芽が芽吹いていることにも気づかずに。  了
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