起&喜

1/1
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ

起&喜

 おつとめ品コーナーを覗いたら、魚の缶詰が安かった。見慣れないパッケージだが、値上げラッシュ後には有難い。  会計を済ませ、なるべく綺麗に、無料の段ボールに箱に缶詰を詰め込む。缶詰は予定外の買い物だったので、手持ちの袋では足りなかった。それと、袋に入れるより、底が平らで硬さもある段ボール箱の方が、安定させるのにも良かった。  何缶かでパッキングされた缶詰なら、まあまあ纏まってくれる。だけど、値引きシールの貼られた缶詰は、陳列の際に落としたのか、変形しているものもあった。  それに、形もてんでバラバラで、袋の中で重ねたところで、金属がぶつかり合う音を立てまくるのだろう。ならば、無料の段ボールの方がまだ安定する。袋に比べて、運びにくいけど。  缶詰の入った段ボール箱を抱え、帰路につく。雨の降らない日で良かった。傘をさしながら、段ボール箱を抱えるのは難しい。雨の日でも働く宅配業者さん達は、ひたすら偉いな。  そんなことを考えながら歩いていると、猫な宅配業者が使う端末から生じる様な音。高音の「ニャー」が微かに聞こえた。  しかし、猫の姿は見当たらない。だが、代わりに道端には段ボール箱。スーパーに置いてある綺麗めな段ボール箱と違って、触りたくない感じの段ボール箱が有った。  目を凝らして見れば、「拾って下さい」の文字列。んな汚い段ボール箱は拾いたくない。そして、段ボール箱は丁寧に蓋が組み合わされ、それを外さない限り、中は確認出来なかった。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!